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アメリカでの日々の雑感、臨床に入り込むまで、及びアメリカ臨床留学の苦闘など


by takamed
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気分の悪い思い

久々の更新は、少し失敗(というほどでもない)というか、気分の悪い思いをした話など。

下半身不随でsuprapubic catheterを付けている男性。ひと月ほど前にMental status changeでこの病院に入院。僕の同僚が担当し、UTIによるToxic Metabolic encephalopahtyと診断、尿培養でPseudomonasとMRSAが positiveのため、total 3週間のCefepimeとVancomycinで退院となっている。

先週くらいに抗生剤治療を終えたばかりのところで、全く同じ症状で再入院。UAは明らかにUTIの所見。最初の尿培養はnegative。抗生剤使用による、偽陰性であろう。昨日患者を受け取り、あらたに尿培養をオーダーし、ERがスタートしていたRocephinをCefepimeとVancomycinに変更した。この時点で既に患者のmental conditionは改善している。

本日朝患者を診ると、再オーダーの尿培養はいまだpending。再入院であり、抗生剤の選択にも余地があったため、少なくとももう少し入院継続の旨患者に伝えていた。その後、ケースマネージャーから直接電話。なぜ今日nursing homeへ退院出来ないのか、と言ってくる。再入院であり、尿培養の結果を待つ必要がある旨説明し、それで済んだと思っていた。

ところが、本日少し早めに帰宅して、自宅でカルテを書いているところで、ケースマネージャーを統括しているドクターから直接電話。事情を説明してくれとの事。状況を説明し、納得してもらったのだが、とにかく入院日数が最近特に長く、ケースマネージャーにもプレッシャーがかかっているとの事。あらためてカルテを見ると、2度目の尿培養もnegativeの結果が戻ってきていた。

先月、このケースマネージャーミーティングで、僕の入院日数が長い傾向がある、と個別にプレッシャーをかけられた事もあり、ここで判断を誤ってしまった。培養が陰性であれば、抗生剤を選別することも出来ず、結局かつての培養の結果から、同じ抗生剤で退院の方向に動く旨、そのドクターに伝えてしまった。受け入れ先のドクターに連絡すると、このドクターがかつてのアテンディングである。ここで彼にレジデントさながらに、色々と突っ込まれてしまった。CTは撮ったか?ID (感染症)consultは?。。。。。結局退院を延期し、CTをオーダーし、ID consultをしと。。。。くうう。。

さて、反省点が二つ。
1. 明らかにケースマネージャーからのプレッシャーで、clinical judgementを誤ってしまったこと。この患者はさらに入院が必要という、自分の最初のclinical judgementをもっと信じるべきだった。
2. 尿培養がnegativeの時点で、思考がstuckしてしまったこと。なぜそこで、もう一歩突っ込んで、再感染の理由を深く調べようとしなかったのか。あるいは、なぜID consultを考えなかったのか。suprapubic catheterを再感染の理由と信じ込み(その可能性は非常に高いとはいえ)そこで思考停止に陥ってしまったのだろう。

このように、ケースマネージャーからの退院のプレッシャーは非常に強く、かといって、再入院防止のプレッシャーも非常に強く、しばしば板挟みになる事がある、そして判断を誤る事もある、というお話、でした。
by takamed | 2010-04-15 07:52